大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和35年(く)52号 決定 1960年6月29日

少年 B(昭一八・一二・一生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告理由の要旨は

(一)原保護処分決定で認定された犯罪事実の中ジャンバー一枚は窃取したものでなく所有者なる友人に無断で借り受け事後に同人の承諾を得たものであり、(二)住居侵入は窃盗の目的でなかつたのに警察及び家庭裁判所では窃盗の犯意があつたと認められ、(三)少年の処分は犯行よりは犯行当時の状態、鑑別所における生活、反省の度合、将来の生き方、心掛を重視して審判すべきであるのに原決定はこれについての考慮を欠き再犯者が釈放され初犯者が送致決定をうけるなど公平に審判されていないから原決定に不服である、というにある。

よつて抗告人に対する少年保護事件記録を精査するに原決定掲記の犯罪事実は抗告理由(一)のジャンバー一枚窃取の点を含めすべてこれを認めるに十分であり又同(二)の住居侵入の目的については原決定は就寝の目的であつたと認定しているのであるから抗告人の主張は理由がない。よつてすすんで抗告人に対する保護処分の要否につき按ずるに、前記記録及び少年調査記録を精査しこれに窺われる抗告人の年令、性行、経歴、境遇、家庭の状況、交友関係、本件犯罪の動機、態様、犯行後の状況その他一切の情状を考量すれば、抗告人の健全な育成を図りその性格を矯正し社会及び家庭に適応せしめるためにはこれを少年院に収容して不良の交友から隔離すると共に紀律ある生活の下に適当な矯正教育を施すことを必要と認めるので、抗告人を中等少年院に送致する旨言渡した原保護決定は誠に適切であるというべきである。しかして抗告理由(三)において主張された事項はすべて原決定において十分考慮されていることは原決定の理由の記載により明白であり原決定が公平を欠いたと認められる何等の証左もないから抗告人の右主張も到底これを認容するに足りない。なお、一切の情状を勘案した場合再犯者と雖も少年院収容の必要なき場合もあり又初犯者といえども収容を適当と認める場合もあるのであつてこれを以て不公平な審判というのは当らないのである。

以上のとおりであつて本件抗告はすべて理由がないから少年法第三三条第一項、少年審判規則第五〇条によりこれを棄却することとし主文のとおり決定する。

(裁判長判事 長谷川成二 判事 白河六郎 判事 真野英一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例